『チベット旅行記』河口慧海著
河口慧海著『チベット旅行記』(現代世界ノンフィクション全集〈第6〉)
100年も前にチベットに一人で旅行したお坊さん、河口慧海(えかい)の物語。河口慧海の清廉潔白な人柄が魅力的。
これだけ大変な出来事に出会っても生きて帰ってくるのは、やはり何らかの導きがあったからとしか思えない。
あるチベット人(カム人が)、霊峰に向かって懺悔した言葉。
私がこれまで幾人かの人を殺し、あまたの物品を奪い、人の女房を盗み、人と喧嘩口論をし、人をぶんなぐったいろいろの大罪悪を、ここで確かに懺悔しました。だからこれで罪はすっかりなくなったと私は信じます。これから後、私が人を殺し、人の物を奪い、人の女房を取り、人をぶんなぐる罪も、ここで確かに懺悔いたしておきます。
(p. 72)
かくも都合よく懺悔を使えるとは、たいしたものだ。